スーツのお手入れとクリーニング

お手入れの1丁目一番地は「ブラッシング」から・・・

虫対策、親虫を殺処分する。

衣更え、オフシーズンの収納。

長持ちさせたかったら、ドライクリーニングをしない!


外出から帰って、その日に着ていたオーダースーツなどを、そのままクローゼットに片付けていませんか?

まずは、ブラッシングから・・・

【服を脱いだら】ポケットに入っていた物を、すべて出してください。

それらを、引出しや小箱などにまとめて入れておきます。次に出かける時、そのすべてをポケットに戻します。ハンケチもこの時に変えておきましょう。

そうすることによって、ポケットに入れたままの物の、重みによる型崩れを、防ぐことが出来ます。

あくる日、ほかのスーツやジャケットに着替えたときになどには、入れ替入れ忘れがありません。

【上着やスラックス】

部屋干し.jpg

ズボンハンガー.jpg

上着は肩幅の合った、しっかりしたハンガーに形を整えて掛けます。

スラックスは、ズボンハンガー又はスカートハンガーに、裾を上にして掛けます。裾を上にすることによって、ウエスト部分の重みで伸びてシワも取れます。

そのあと、ブラッシングをして、少なくても1日以上は風通しの良いところにかけて、クローゼットに入れない。

部屋干しをし、吸収した汗を発散させるために風を通してください。

ブラッシングと部屋干しは衣類に付いた汗などの水分や埃、衣類の虫の幼虫、卵も掃い落とします。

【ブラッシング】

ブラッシングはまず、襟と肩付近を軽くたたく。

たたくことによって、生地の中の埃や塵を表面に浮き立たせる。

そして、上から下へ、襟から袖、裾に掛けて掃うようにブラッシングをします。

 

【ほうきブラシ】

1ほうきブラシ.jpg私たちテーラーがお勧めは 「箒ブラ

シ」

20~30センチほどの稲わらなど植物で作られた手ホウキです。

大きな糸くずなどは、ゆっくり掃き落とし、小さな埃やゴミ、花粉は先の方でサッさと掃います。

また、縫い目や生地に埋まった物(食べかす、乾いた泥)などは、箒の先を握って、ブラシ(たわし)状にして、軽くゴシゴシ擦ると、剥がれ落ちることがあります。

 

そのほか、カシミヤなど毛足の長い生地は、大きくゆっくりと毛並みに沿って、上から下へブラッシングすることによって、毛並みが揃った艶のあるカシミヤの生地に蘇ります。

フォーマルスーツの場合も、この「手ほうき」の方が、小さな目立つ埃も簡単に落とせます。

このように、植物性の手ほうきは生地を傷めず、静電気も起こりにくく、扱いやすく、手軽で、そして何よりも安い!

ホームセンターやスーパーなどで気軽に求めることが出来ます。

※私どもプロも、このほうきブラシを愛用しています

※ちなみに、ウールには豚毛、カシミヤには馬毛が良いとも言われて、百貨店などで売られていますが、手ほうきに比べると高値のプライスが付いています。

そのほかのブラシとしては、マジックブラシがあります。一方方向にブラッシングをして、埃を落とすことが出来ますが、打ち込みのしっかりした生地にしか使えず、カシミヤなどの柔らかい生地には不得手です。ましてや、逆方向にブラッシングをすれば、ブラシに付いていたゴミや埃が洋服に絡みつき、生地を傷めることがあります。

虫対策はされていますか?

虫が一番好むのは、風通しの悪い、混みあった状態のクローゼットの中や蓋が閉まらないほど詰まった衣装箱。

ましてや、その衣類に食べ物のカスや汚れ、シミがあれば天国です。

ガリガリ、ボリボリ、衣類が穴ぼこ状態に・・・!

 

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  ミメマルカツオムシの成虫

 

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コイガの成虫

衣類に付く虫の種類として

「イガ」 「コイガ」 「ミメマルカツオムシ」などが代表的です。

その多くは、たんぱく質の多く含むカシミヤやオールウールの製品を好みます。

●ちなみに、ポリエステルや化学繊維混紡には付きません。

衣類の虫食いを防ぐには、クローゼットの中を風通し良く、満員電車のようにあまり詰め込まないことがまず一番です。

食べ物の汚れやシミなども注意してください。

その上で、市販の防虫剤や匂いのある物を入れてください。

匂いのきつい石鹸、線香、アロマオイルや杉、ヒノキなどの細工物も防虫効果があります。

但し、着用前には、風通しの良いところで、臭いをを飛ばしてください。

【親虫を退治しよう】

肝心なことは虫を寄せ付けないことです。

それには卵を産み付けないように親虫を退治することです。

衣類を食べるのは、それらの虫の幼虫です。

春から夏にかけて、親虫の蛾が飛び始めます。

それを見つけ次第、殺処分しましょう。

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【お勧めは藍染やジーンズの衣類】

藍染の原料の蓼藍は「蓼食う虫も好き好き・・・」と言われるように、藍染の衣類をクローゼットに入れておくだけで、防虫剤は必要ありません。

蚊取り線香の原料も蓼藍の種類から作っています。

衣更えのときに

春から夏へ、夏から秋冬へ、そして冬から春へと、日本の美しい四季の移ろいに合わせて、その時々に着る衣類も衣更えをします。

【クロゼットの中は風通し良く】

オフシーズンのものと、オンシーズンのものとがクローゼットの中で混在することだけは避けていただきたいです。

クローゼットの中が、それぞれのシーズンのものがまるで満員電車のような状態では、せっかくのオーダしたスーツはクチャクチャになり、時として虫の餌食になりません。

クローゼットの中は常に風通し良く、今のシーズンに着たい服がサッと取り出せるようにしておきたいものです。

【シーズンオフの洋服は何処に?】

大きなクロゼットルームがあれば、その心配はないのですが、ほとんどの場合、お手持ちのスーツやジャケットがすべてを収納するスペースがないと思います。

では、シーズンオフのスーツなどは何処に収納すればよいのか?

お勧めは、洋服箱や衣装ケースに収納することです。

ちょっと待て!

オンシーズンになって、箱などから出した時シワだらけになっているのでは・・・!

ご心配なく、畳みシワが最小限度に収まる方法があります。

 

上着の畳み方

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まず、上着を平らな状態に置いてください。

写真のように、脇ポケットが自然に納まるようにしてください。

そして、「上衿は必ず起してください。」

上衿を寝かした(着用時)状態で畳むと、来シーズンに着ようとして箱から出してみると、ラペルの返り部分が、本来納まるべき第1ボタンよりかなり上の方になってしまい。

オーダースーツの真骨頂、八刺しをすることによる、ラペルのボリューム感、豊かな返り、丸く膨らんだ風合いを潰してしまうことになりかねます。

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「必ず、上衿は起こしてください。」

ポケット、脇が素直に置かれ、袖も自然にな状態に置いてください。

 

次は、袖を脇から上に斜め上方に(自然になります)脇下いっぱいから畳みます。

その時、端を引っ張ってシワを伸ばしておくと、次に出した時折シワはかなり少なくなります。

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最後に、上着全体を半分に畳むだけです。

この畳み方が、来シーズンに洋服箱や衣装箱から出した時、畳みシワは最小限に抑えられます。

この時、袖を畳むところや上着を半分に畳む場所に新聞などを丸めたり、ポチポチを挟み込むと、よりシワになりにくいです。

この畳み方ですと、数着一緒に収納も可能です。

防虫剤を入れて、その上からビニールなど(洗濯袋)などを掛けて蓋をすればOKです。

 

霧吹き

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【シーズンイン】

箱から出した上着やスラックスはハンガーに掛け、衿を元通りに直し、洋服全体の形を整えます。

これからが、お勧めのシワ解消法です。

ハンガーに掛けた洋服に向かって霧吹きをします。

特に、シワの目立つ場所には、充分に霧吹きをしてください。

水が滴り落ちるぐらいでも大丈夫です。

ちょうど、障子紙を貼る時に霧吹きをする要領です。

そのまま、直射日光の当たらない風通しの良い場所に吊るしておけば、自然にシワは解消されています。

仕立ての良い洋服ほど、顕著に体験できます。

※霧吹きは、日常の着用後(帰宅後)に行えば、次の着用時にはシワの無いスーツを着て出かけられますよ。

クリーニングについて

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ウールやカシミヤなどの獣毛の生地には自浄作用があって、自然と汚れやにおいが取れる性質があります。

従って、スーパー120’s以上の極細のスーツやカシミヤのコートなどは、クリーニングに出さない方がよいのです。

再々、シーズンごとにクリーニングに出していると、良い素材の艶や風合いが損なわれます。

 

ドライクリーニングは極力避けて下さい。

カシミヤやウールなどの獣毛の表面はべとつかず、埃が比較的に付きにくく静電気も防ぎます。

そのような生地を、やたら石油溶剤を使っているドライクリーニングをすると、獣毛の本来持っている油分を溶かすことになり、生地表面のふわっと感が無くなり、最悪の場合動物の死んだような、ベタ~っとしてむらむらの感触になることがあります。

 

[ 簡単な手入れとしては]

中性洗剤及びアンモニア水や揮発油を薄めたもので、襟や袖口の皮脂の汚れをサッと取り、そのあとよく絞ったタオルで全体を軽く埃汚れをふき取ります。

そして、ハンガーに吊るして、よく乾かし、上から下へ軽くブラッシングします。

 

ドライクリーニング&水性クリーニング

 

【水性クリーニング】

衣服の汚れの90%はタンパク質、アンモニアや塩分ですから、埃や汗、手垢の汚れをよく落とします。

ご家庭の洗濯機で簡単に洗い落とすことが出来ます。

しかし、下着やブラウス、カッターシャツのような軽衣料は扱えても、スーツやコートのようないろいろな素材を組み合わせて作っている重衣料は、ご家庭でクリーニングをすることは大変な手間と技術を要します。

繊維が縮み、乾燥や元の衣類に戻すのには一般の方には負担が多すぎます。

 

で、クリーニング店に出すときに、「ドライクリーニング」を指定していませんか?

 

【ドライクリーニング】

ドライクリーニングは年間を通して乾燥している欧米で発達しました。

石油系や塩素系の溶剤で、身体に付いた皮脂やチョコレート、ボールペン、インク、化粧品などの油性の汚れを落とすのに適しています。

衣類の伸び縮みが生じにくく、繊維に負担が掛かりません。

しかし、汗などのタンパク質や塩分の水溶性の汚れは落とせないため、高温多湿の日本には不向きではないでしょうか。

ドライクリーニングは大きなドラム状の洗濯機の中に、溶剤を入れ、ペーパーフィルターと活性炭でろ過しながら洗っています。

当然のことながら、その利用回数が多いほど溶剤はだんだんと汚れてきます。

その汚れが醜くならないうちに交換を怠ると、衣類の汚れや汗が濃縮された泥のような色になり、あの独特の臭い(脂肪酸臭)を発します。

ドライクリーニングの匀いと思っているのは、溶剤の腐敗臭なのです。

 

【ゴワゴワのスーツ!】

毎年、衣替えのたびにドライクリーニングに出しているあなた!

衣服が年々弾力性がなくなり、ゴワゴワして買ったと時の風合いが失われた経験はありませんか?

これは、ドライクリーニングで落とせなかった、汗の塩分や埃などが繊維の間に固まってしまっているからです。

それによって、繊維を傷め、ゴワゴワになり羊毛本来の弾力が無くなっています。

テカテカになっているのも、ドライクリーニングの性と言っても過言ではありません。

 

【塩抜き】

私どもでは、スーツなどをお求めになってから、余程の汚れ、シミなどがない限り、3年以上はクリーニングに出さないで、ブラッシングを小まめにすることをお勧めしています。

それでも、汚れが酷い場合や年数が経った衣服のクリーニングには「塩抜き」をお勧めしています。

水性クリーニングとドライクリーニングの混合方式です。

昔ながらのクリーニング店の職人さんは、水洗いで汗や埃を洗い流し、溶剤使用(ドライ)で皮脂や口紅などの油性の汚れを取り、水洗いとドライとをうまく使い分けしていました。

衣服のシワなどは大きな蒸気アイロンとプレス機で形を整え、仕上げをしていました。

今では、その職人さんも数少なくなって、一部のクリーニング店か、大手のクリーニング店が取り扱っているとのことです。

料金はそれなりの高額になりますが、お気に入りのスーツをいつまでも気持ちよく着るためには、ある程度の投資もやむ得ないかも知れません。

混合方式を取り扱っていないクリーニング店でも、水性(水洗い)をしている店で、クリーニングに出してみて下さい。以外にきれいになりますよ。

特に、仕上げアイロンの上手なお店を選んでください。

 

私どもでオーダーされた、スーツやジャケット、コートについては、余程のシミや汚れが付いた場合以外は、日々のブラッシングだけで、シーズン毎のクリーニングはお勧めしていません。

繊維の鱗状(スケール)の特徴が水分や油分をはじく役割をしている生地をドライにしろ、ウエットにしてもクリーニングすることによって、かなりのダメージを与えていることになります。

 

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